2014年10月13日月曜日

リスニングをモニタリングとして使う

更に続いて、マニピュレーションに関するなんとやらの三回目。

前回はPAチームに送る回線と何故回線を分ける必要があるのかについて書きました。
本番中に僕がやっていることも少しだけお話しましたが、なんとなく分かって頂けたでしょうか?
今回は「何故、モニター回線を二系統もらうのか?」に関してのエントリーです。

そもそも、モニタリング・モニターとはなんぞやというところから書いていきましょう。
ライブを観に行ったことがある方は、ステージ上に幾つもの四角い箱のようなものがミュージシャンやボーカルの人の前に設置されているのを見たことがあるのではないでしょうか。
あれがモニタースピーカーと呼ばれるもので、特に床に置かれているものは通称「コロガシ」と言います。
ステージの両脇からお客さん側ではなく内側(演者側)に向けられている大きめなスピーカーは「サイド(スピーカー)」と言い、同じくモニタリング用途のものです。
最近では耳にはめ込む、いわゆるイヤフォン型の通称「イヤモニ(In Ear Monitor)」も広く使われるようになっています。

歌をうたう、楽器を演奏するには自分の音以外の演奏とアンサンブルしますよね。
その際に自分が必要とする音を聞く(確認する)ことをモニタリングと言います。
アンケート等で調査・リサーチすることをモニタリングと呼びますが、それと同じですね。
モニターには監視するという意味合いもあるので、それを音に置き換えてみるとイメージしやすいのではないでしょうか。

通常、モニター作りはPAチームのモニターエンジニアさんにオーダーして自分好みのバランスを組み立ててもらいます。
この時、ある特定のパートの音域を調整してもらったり、イヤモニであれば定位(右や左、音の居場所のこと)を変えてもらうといったことも可能です。
例えば会場の"鳴り"として低音が響くのでモニター上ではベースの低域を削ってもらってすっきりさせて音階を感じ取れるようにしたり、自分の歌にリバーブを掛けてもらって雰囲気を出したり等々。
こうやって自分が歌いやすい・演奏しやすい環境を作っていくわけです。
リズムキープするためにドラムの3点(Kick・Snare・Hat)を多めで鍵盤を上げてコード感を見失わないようにする、さらには「この曲の時だけ」というオーダーもあったりと、その内容は人によって十人十色なのでモニターエンジニアさんは大変!
ゲストが多数出るような大きなイベントなど、演者が多いところではバンド、ボーカルそれぞれ専任のモニターシステム・モニターエンジニアさんがいる場合もあります。
勿論お客さんの声を聞くためのオーディエンスマイクというのもありますので、たとえイヤモニをしていてもお客さんの反応やコール&レスポンスをしっかりと感じることが出来ます。
(これがないとレコーディングしているみたいに冷静になってしまって本当に寂しい)



前置きが長くなりましたが、このようにして僕もモニターを作ってもらい、それを自分のミキサーに送ってもらいます。
同時に、最終的にお客さんが聴いているミックス…ハウスエンジニアさんの作るハウスミックスも同じくミキサーにもらいます。
それぞれの用途は以下の通り。

■モニターミックス

自分のやりやすい環境で音を確認、構築していく場合はモニターミックスを聞きます。
こちらがリクエストしない限りは基本的にバランスは変わらないので、特にたくさんの音色を扱う僕のパートでは自身の音が前後の曲に比べてバランスが崩れていないかという確認作業がとても重要になります。
他のメンバーの音は、ハウスミックスと同じようにお客さん側からの定位にしてもらいます。
自分の音はそのままこちらが作った定位で出ますから、例えばバンドのギターが右寄りで出るなら同じタイミングで出てくるシンセの音は左に寄せて見えやすく配置することもあります。
その他にも、CDではTomが左から右へ流れて(ドラマー視点)最後に右でSEが鳴る、といったときにライブミックスではお客さん視点になってTomが右から左へ流れるのでSEも逆にすることでストーリーを成り立たせたり。
このようにケースバイケースですが、結果CDとは違う定位になることもあります。
特に全体のバランス作りをしていくリハーサルではこちらをメインに聞きながら作業します。
本番ではMCから次の曲へのキューになるセリフやきっかけの音(VTR音声から本編への乗り替わりなど)を聞き漏らさないために大きめに返してもらったりもします。

■ハウスミックス

前回までのエントリーにおいて、こちらがいくつかの系統に分けて音をPAに送っていることを書きました。
ハウスエンジニアさんが最終的なすべての音(歌、演奏)のミックスをして客さんが聴く「正解の音」となるのですが、このときに自分の音(自身の手元のバランス)がそのまま反映されないこともあります。
前回書いた、あるシチュエーションにおいて音量の上げ下げをハウスエンジニアさんが行っている場合などはモニターミックスでは分からないので、本番ではこちらをメインに「ライブの流れ全体の中での自分の音」を聞いてオペレートしていきます。
この場合、シーケンス小さめでミックスされていたときには自分の音を把握できないこともありますが、そのこと自体を知るというのも大切なプロセスです。

これらを状況に応じて手元で切り替えることによって聞くべき所はしっかりと聞いたり全体の中での自分の音の居所をコントロールします。
もしPA側の都合でどちらか片方しかもらえない場合はハウスミックスをもらいます。
ハウスミックスはお客さんが「聴く=リスニング」のための音なのですが、これを「聞く=モニタリング」わけですね。


今回もかなりなざっくり具合でしたが、なんとなくご理解いただけましたでしょうか?

蛇足になりますが、僕がこういった音にまつわることを書く時はこれらリスニングとモニタリングの意志を反映させるようにしておりますので、注意深く見ていただければ僕が音楽を楽しむために聴いているのか何かを聞き分けるために聞いているのかが「きく」の表記から読み取れると思いますよ。