2014年10月21日火曜日

ライブ向けソフト、一長一短

ハードシーケンサーにシンセや音源モジュールを大量に繋いでオペレートしていた時代は既に懐かしく、今ではパソコン一台で様々なデータをオーディオ出しするのが一般化しています。

ライブに使うソフトは人によって様々ですが、ユーザーとして多いのはProTools、Digital Performerといったところでしょうか?

ProToolsは制作現場(特にレコーディングスタジオ)では大定番で、現在の音楽シーンのほとんどで使われているためCD制作時の最終データをそのまま流用できるのがメリット、安定性も抜群です。
アウトボードを多用したりコンソール出しでTDされたものでなければさほど時間もかからず仕込みが出来るのもポイント。
反面、1曲=1ファイルを多数読み込んで並べることは出来ないのでたくさんの曲を演るライブには不向きです。
「一曲毎に閉じて→次曲を開いて」ではファイルが立ち上がるまで時間が掛かりますし、そのためにProToolsシステムをふたつ用意してピンポンするのも規模が大きくなります。
ですのでProToolsをメインに扱う人のほとんどは、パラデータをある程度ステム化したのちに通称マスターセッションと呼ばれる「各曲のステムデータを並べたセッションファイル」を作り、それを再生するという方法を取っているかと思われます。
0秒から一曲目、10分から2曲目…のように、横の時間軸にずらっと並んでいるわけですね。
デメリットとしてはステムデータ内のバランスを変えることになった場合はそれぞれのセッションファイルに戻って書き出しを行い、それをまたマスターセッションに戻すという作業が必要になること。
通しリハ中などに「あ、やっぱりこれだけ上げておこう」みたいな状況に対応しにくいわけです。

Digital Performerも一部のマニピュレーターさんに人気のソフトで、僕も十数年の間はライブで使っていました。
このソフトのメリットは各曲のデータを大きな箱のなかの一つとして管理できること。
つまり〇〇ライブというファイルの中にいくつもの独立した曲ファイルを入れ込んでスイッチしていけるのです。
デメリットとしては、先ほど書いたように現在渡されるほとんどのデータはProToolsファイルになるために仕込み作業が必須なところ。
そのままでは開けないのでまずはProTools上で移植するためのデータを作成してそれを読み込んでいかねばならず、内容によってはかなりの時間を要します。
その他にもオーディオ関係のエディットなどにおいて若干の弱さを感じるところがありますが、そもそもがMIDIをメインにした音楽制作ツールから進化したものですから仕方がないところなのかもしれません(とは言え今のバージョンに至るまでにかなり頑張ってきたと思います)。

他にもマニピュレーターの人がマニピュレーター業とは別に作曲やアレンジなどの制作仕事をしている場合、普段使い慣れているソフトをそのまま使うことも少なく無いと思います。
ちなみに僕はこのケースで、ここ数年は制作・ライブ共にStudio One 2を使っています。
メリットはとにかく動作が機敏なこと。
特にオーディオのタイムストレッチ速度が素晴らしく、テンポ設定を最初にしておけば数十トラックを数秒もかからず変更できます。
ライブ現場では前後の曲との関係などからテンポ変更をすることがあります。
これが他のソフトだとクォリティーとの兼ね合いからかなりの時間を要してしまうことがあるのですが、Studio Oneだと同じことを待ち時間皆無と言える速さで行うことができるのです。
今まではこうしたテンポ違いを試してみたいといった場合は前日に仕込んだり、もしくはシーケンスを回さない曲をやっていてもらい、その間に作業したりと「マニピュレーター待ち」がありましたが、このソフトにしてからその場ですぐに何通りでも試すことが出来るようになりました。
概念が独特なので慣れが必要なものの、エディットに関しても他のソフトと同等以上のことができるので走らせながらどんどん編集作業を行うことが出来るのも魅力です。
複数の曲を立ち上げておけるのもライブ向けです。
Digital Performerのようにひとつのファイル上にというスタイルとは少し違い、裏に複数のファイルを立ち上げておくことができ、任意に切り替えることで同様のオペレーションを実現できています。
デメリットとしてはSMPTEなどの同期に関する機能はなく、例えば映像と同期信号を使って完全にリンクさせるなどといったことは出来ません。
また仕込みに関してもDigital Performerなどと同じく事前にレコーディングデータ(ProToolsデータ)からコンバートしてしっかりと作らないといけません。

僕はどのソフトを使っていても、最終的に本番ではAlesis ADAT HDに流しこむので実質どれも同じということにもなるのですが、リハーサルでの進行を妨げずにどんどん進めていけるStudio Oneが今は一番使いやすくてお気に入りです。
大切なのは現場において「今って何の待ち時間?」という状況を作らないこと。
マニピュレーターが朝イチから夜遅くまで同じ場所、同じ体勢で休憩もほとんど取らずに何かをしているのはこのための準備がほとんどだったりします。
そういった意味でも処理の速さや守備範囲の広いStudio Oneを使うようになってから休めるようになったかも…!

今回もかなり突っ込んだエントリーになりましたが、何かの参考にでもなれば幸いです。